相続税・贈与税のあり方についての答申から読み解く

 令和4年2月21日に日本税理士会連合会税制審議会というところから「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について -令和3年度諮問に対する答申―」という文書が発信されています。

 暦年贈与課税の仕組みが改正される?!ということで週刊誌等でも話題になっているのでお聞きになった方も多いかもしれません。本日は、それこそ「中立」な立場で上記の答申を読み解いてみたいと思います。

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 はじめに書いてありますが、現行の贈与税に関しては、暦年贈与の過度な利用によって相続税負担の回避が可能になるという構造上の問題がまず指摘されています。そのため、週刊誌等では暦年贈与課税の仕組みが改正される?!となった訳です。

 一方で、答申にも書いてあるのですが、人生100年時代を迎え、いわゆる「老老相続」の増加によって、消費意欲の高い若年世代への資産の移転が進みにくいことも問題で、逆に資産の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要だとされています。

 一見すると相反する2つの目的のように思えてしまうのですが、それらを同時に実現するために専門委員の方が考えていることは、答申を最後まで読む限り、次のような制度設計のアイデアであると想像します。

 ① 暦年贈与課税制度を見直して、相続時精算課税制度(※)を標準的な制度とする

 ② 相続時精算課税制度の弱点である少額贈与の記録管理の問題を解消するために、一定の少額贈与であれば記録管理(贈与履歴の累積)の対象外とする

 ③ 相続税の計算時に精算課税される贈与財産の価額の下落によるリスクに一定の配慮をするため、災害等の事由の際には相続時の時価で精算課税出来るようにする

 ④ 現在は贈与財産に小規模宅地等の特例が使えないなどの問題があるため、相続と贈与のいずれの移転原因でも税負担が同額となるように、精算課税時に同制度が使えるようにする

 (※)贈与税の基礎控除額を大きく設定して資産の移転を促し、贈与額の累積が基礎控除額を超えた場合に贈与税の納税が発生する制度。相続時には、それまでの贈与額の累積を相続税の計算の基礎に加えて相続税で精算することから「相続時精算課税制度」という。

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 最終的に上記のような改正内容になるかどうかはまだ分かりませんが、今後の方向性をチェックしていきたいと思います。答申の全ての内容が気になる方は、下記のリンクから確認してみてください。

                           文責: 清水 博文

 

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